「あの夜のこと……ちゃんと、覚えてる?」
その言葉が聞こえたのは、玄関のドアを閉めた直後だった。
七瀬さんの部屋――久しぶりに足を踏み入れた、あの場所。
「……はい」
返事をすると、七瀬さんはうっすら笑って、
リビングのソファに腰を下ろした。
「ふふ……もう、あんなことはダメだと思ってたのよ」
「でも……あなたの顔見たら……身体の奥が、思い出しちゃって……」
その言葉とは裏腹に、彼女の足元はとても静かだった。
でも――しっかりと履かれた、あの白いリブソックスは、
まるで“また始まる”ことを予告しているように、存在を主張していた。
「今日はね、何もしないって決めてたの」
「だけど……それって、自分に嘘ついてるだけかもしれない」
七瀬さんはゆっくり脚を組み替えた。
くしゅっとしたソックスの折れ目が、膝の上でやわらかく形を変える。
「……匂い、嗅ぎたい?」
小さく、でもはっきりとした声だった。
答えるより早く、七瀬さんの足がぼくのほうへ伸ばされる。
白ソックス越しに、彼女の足先がぼくの顔をなぞってきた。
「ほら……前みたいに……我慢できる?」
息が詰まる。
触れてるだけなのに、
あの夜の温度が、全部よみがえる。
「……もう、止めなくていいよ」
七瀬さんの瞳が揺れる。
けれどその奥には、もう迷いはなかった。
七瀬さんの足が、ぼくの頬をそっとなぞる。
「……あ、やっぱちょっと匂ってるかも」
そう言いながら、つま先をぼくの鼻先にすり寄せてくる。
リブソックス越しにほんのりとこもった、湿った香り――
それだけで身体の芯が反応してしまう。
「くすっ……ほんとに好きなんだね、こういうの」
七瀬さんは足を上下にゆっくり滑らせながら、
ぼくの股間に意図的に触れないように避けている。
でも、その“触れない”こと自体が、余計に熱を煽る。
「私ね……この前、あなたが出したの、ソックスの中にちょっと飛んでたの……」
「えっ……」
「……捨てられなかった。洗わずに、ビニール袋に入れて……隠してあるの」
ぼくの視線が、一気に彼女の足元に集中する。
今日のリブソックス――もしや、それが、あの夜のまま……?
「ねぇ……もしかして、これって……」
「ふふ、秘密。気になる?」
七瀬さんは、足を開き気味に座り直す。
スカートの奥、白ソックスがふくらはぎから太ももへと繋がるラインが強調され、
ぼくの視界をまるごと支配してくる。
「でもね、今日は……まだ、入れちゃダメ」
囁くように言いながら、七瀬さんはぼくの膝にまたがるように座りかける。
白ソックスのつま先が、今度は股間にそっと触れる――
明確な“足コキに近い接触”。
「ここまで……焦らされて……まだ我慢できる?」
七瀬さんの瞳は、もう完全にスイッチが入っていた。
でも、“最後の一線”は越えない――
そのもどかしさに、体の奥から火がついていく。
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